2026年、法務省の有識者検討会が売春規制のあり方について議論を開始しました。現行の売春防止法では売春をする側に罰則がある一方、買う側は処罰対象外となっており、この不均衡の是正が今回の焦点となっています。
売春防止法は1956年に制定されて以来、大きな改正がなされていません。しかし近年、路上での客引きやSNSを利用した勧誘行為が社会問題化し、法制度の見直しを求める声が高まっています。特に性的搾取の被害者保護という観点から、現行法の限界が指摘されてきました。
諸外国では「ノルディックモデル」と呼ばれる、売る側を非犯罪化し買う側を処罰する法制度が広がっています。スウェーデンで1999年に導入されて以降、ノルウェー、アイスランド、フランスなどが採用し、性的搾取の需要を減らす効果が報告されています。日本でもこのモデルを参考にした議論が進む可能性があります。
一方で、法改正には慎重な意見もあります。買う側を処罰することで売春が地下化し、かえって当事者の安全が脅かされるという懸念や、取締りの実効性に疑問を呈する声もあります。また、性産業で働く人々の生活保障や支援体制の整備が不十分なまま規制を強化することへの批判も存在します。
重要なのは、売春を単なる道徳問題ではなく、貧困や性的搾取、人身取引といった構造的問題として捉える視点です。多くの場合、売春に従事する人々は経済的困窮や社会的孤立など、複合的な困難を抱えています。法規制の議論と並行して、こうした背景にある社会問題への取り組みが不可欠です。
今回の検討会では、被害者支援の充実、教育啓発の強化、関連事業者への規制なども議論される見込みです。単に処罰対象を広げるだけでなく、性的搾取を生み出す社会構造そのものを変革する包括的なアプローチが求められています。法改正がどのような方向性を示すか、今後の議論に注目が集まります。
私たち市民にとっても、この問題は他人事ではありません。性の商品化が当たり前とされる社会の価値観を問い直し、誰もが尊厳を持って生きられる社会のあり方を考える機会としたいものです。法改正の行方を見守るとともに、一人ひとりが性搾取の問題について学び、考えを深めていくことが大切です。