イランでは物価高騰に抗議するデモが10日以上続き、革命防衛隊による厳しい取り締まりで多数の死者が出ている。病院には「遺体が山積み」との証言もあり、亡命中のパーレビ元皇太子が全国ストを呼びかけるなど、緊張が極限まで高まっている。
イランの反政府デモは、単なる経済問題ではなく、イスラム体制そのものへの不満が噴出した現象である。1979年のイスラム革命以降、宗教指導者による統治が続いてきたが、経済制裁と腐敗により国民生活は困窮している。今回のデモは、体制の正統性が根本から問われている証左と言えよう。
革命防衛隊が「治安維持はレッドライン」と強硬姿勢を示す背景には、体制崩壊への恐怖がある。革命防衛隊は単なる軍事組織ではなく、経済利権を握る既得権益層でもある。彼らにとってデモの拡大は、自らの特権を失うことを意味するのだ。
パーレビ元皇太子の全国スト呼びかけは、王政復古を望む勢力の存在を示している。しかし、イラン国民の多くは必ずしも王政回帰を望んでいるわけではない。求められているのは、民主的で透明性のある統治システムである。
国際社会の対応も重要な要素である。欧米諸国は人権侵害を非難しているが、実効性のある支援は限定的だ。一方で、中国やロシアはイラン政権を支持する立場を取っており、地政学的な対立構造が複雑に絡み合っている。
この事態から学ぶべきは、経済的困窮が政治体制の危機に直結するという教訓である。物価高騰という経済問題が、体制批判へと発展するプロセスは、多くの国で見られる普遍的なパターンだ。経済政策の失敗は、単なる数字の問題ではなく、人々の生命と尊厳に関わる重大事なのである。
イランの今後は予断を許さないが、この危機は中東全体の安定にも影響を及ぼす。民主化を求める声と既存体制の抵抗、国際社会の介入、これらの要素がどう展開するかが注目される。歴史の転換点に立つイランの人々の勇気と犠牲を、私たちは忘れてはならない。