西武ライオンズの今井達也投手がヒューストン・アストロズと6年99億円規模の大型契約で合意したことが報じられた。ポスティングシステムの譲渡金上限により、西武は約15億円しか獲得できず、NPBとMLBの経済格差が改めて浮き彫りになった。
この移籍が示すのは、日本球界の収益構造における根本的な課題である。選手を育成しても、MLB移籍時に球団が得られる対価は契約額のわずか15%程度に制限されている。これでは育成投資の回収が困難であり、球団経営の持続可能性に疑問符がつく。
NPB球団の収益源は入場料、放映権、スポンサー収入が中心だが、MLBと比較すると規模が圧倒的に小さい。アストロズのような中堅球団でも年間収益は400億円を超えるのに対し、NPB球団の多くは100億円前後にとどまる。この格差が選手流出を加速させる構造的要因となっている。
ポスティングシステムは2013年の改定で譲渡金に上限が設けられ、球団側の交渉力が大きく低下した。かつては松坂大輔で60億円、ダルビッシュ有で52億円の譲渡金が発生したが、現在のルールでは大谷翔平クラスでも約30億円が限度である。選手の権利保護と球団経営のバランスが崩れている。
この問題の背景には、NPBの国内市場依存体質がある。MLBが全世界から収益を得るグローバルビジネスモデルを確立したのに対し、NPBは国内放映権と地域密着型の運営に留まっている。デジタル配信やグッズ販売などの新収益源開拓も遅れており、収益多角化が急務である。
今井の移籍は西武にとって痛手だが、日本球界全体で考えるべき転換点でもある。選手育成力を収益化する仕組み、MLB並みの放映権ビジネス、アジア市場への展開など、抜本的な改革なしには優秀な選手の流出は止まらない。球団単独ではなくリーグ全体での戦略が求められる。
NPBが真に競争力あるリーグとして存続するには、収益構造の再設計が不可欠である。ポスティング制度の見直し交渉、デジタルコンテンツの強化、国際試合の拡大など、できることは多い。今井移籍を契機に、日本球界の未来を真剣に議論する時が来ている。