2026年現在、首都圏の賃貸市場で「定期借家契約」が急増している。都内の募集シェアは9.3%に達し、渋谷区では実に18.1%と5件に1件が定期借家という状況だ。契約期間満了で自動終了し更新がないこの契約形態は、貸主には有利だが借り手には厳しい条件となっている。
定期借家契約とは、あらかじめ定めた期間で契約が終了し、原則として更新ができない賃貸借契約だ。普通借家契約と異なり、貸主は正当事由なしに契約終了を主張できる。借主にとっては住まいの安定性が損なわれ、長期的な生活設計が立てにくくなるという大きなデメリットがある。
なぜ今、定期借家契約が増えているのか。背景には不動産投資の活発化と、貸主側のリスク回避志向がある。将来的な再開発や建て替え計画がある物件、相続対策として一時的に賃貸に出す物件などで、定期借家契約が選ばれるケースが増えている。貸主は契約期間を自由に設定でき、確実に物件を取り戻せるメリットを重視しているのだ。
渋谷区で特に定期借家契約が多い理由は明確だ。都市再開発が活発で、将来的な建て替えや用途変更の可能性が高い立地が多い。また、外国人駐在員など短期滞在者向けの需要も多く、定期借家契約との相性が良い。こうした地域特性が、定期借家契約の急増を後押ししている。
借り手にとっての注意点は多い。契約期間中の家賃交渉は基本的に不可能で、更新もできないため引っ越しを余儀なくされる。子どもの学区や通勤の利便性を考えて住まいを選んでも、数年後には退去しなければならないリスクがある。契約前に「定期借家」か「普通借家」かを必ず確認し、将来の生活設計と照らし合わせて慎重に判断すべきだ。
一方で、定期借家契約にもメリットはある。一般的に家賃が相場より安く設定されることが多く、初期費用も抑えられる傾向にある。転勤族や短期滞在者、あるいは数年後に住宅購入を予定している人にとっては、むしろ合理的な選択肢となりうる。契約形態の特性を理解した上で活用すれば、賢い住まい選びにつながる。
賃貸市場の変化は、私たちの住まい方そのものを問い直している。定期借家契約の急増は、不動産市場の流動化という大きな流れの一部だ。これからの時代、契約内容をしっかり理解し、自分のライフスタイルに合った住まい選びをする力が、ますます重要になってくるだろう。