トランプ氏のグリーンランド要求が示す新時代の地政学リスク
📅 2026年1月22日(木) 7時01分
✏️ 編集部
🏷️ トランプ氏のグリーンランド関税撤回
トランプ米大統領がグリーンランドの領有を主張し、デンマークなど欧州8か国への関税措置を表明したが、NATO事務総長との合意で撤回された。ダボス会議では軍事力行使は否定したものの、NATO貢献の見返りとして領有権を要求し、欧州首脳から強い批判を浴びた。
この騒動は、戦後の国際秩序が大きく揺らいでいることを象徴している。主権国家の領土を経済的圧力で獲得しようとする手法は、19世紀的な帝国主義を彷彿とさせる。同盟国であるはずのデンマークに対してさえ、このような要求を突きつける姿勢は、NATO体制そのものの信頼性を損なう。
グリーンランドが注目される背景には、気候変動による北極海航路の開拓と豊富な地下資源がある。中国やロシアも北極圏への影響力拡大を図っており、地政学的重要性は年々高まっている。トランプ氏の要求は粗野だが、この地域をめぐる大国間競争という文脈では理解できる側面もある。
NATO貢献を「取引材料」として使う発想は、集団安全保障の理念を根本から覆す。同盟とは共通の価値観と相互防衛の約束に基づくものであり、金銭や領土と交換する商品ではない。この論理が常態化すれば、小国は常に大国の要求に怯えることになり、国際秩序は弱肉強食の世界に逆戻りする。
欧州諸国の反発は当然だが、同時にこの事態は欧州の安全保障における米国依存の脆弱性を露呈した。フランスのマクロン大統領が「戦略的自律性」を訴えてきた意味が、今ほど明確になったことはない。欧州は独自の防衛力強化を真剣に検討せざるを得ない局面に立たされている。
日本にとっても他人事ではない。米国の同盟国として安全保障を依存する構造は欧州と類似しており、トランプ氏の「取引的外交」は東アジアでも展開される可能性がある。尖閣諸島や沖縄の基地問題が交渉材料にされるリスクを、私たちは真剣に考えるべきだ。
この事件から学ぶべきは、国際秩序の安定性を当然視してはならないということだ。ルールに基づく秩序は、それを支持する国々の不断の努力によってのみ維持される。同盟関係も、価値観の共有と相互尊重なくしては持続しない。私たち一人ひとりが、こうした国際情勢の変化に関心を持ち、民主主義国家としての責任を自覚することが求められている。