この記事にはふりがなが付いています。日本語学習者向けです。

トランプ()のグリーンランド要求(ようきゅう)(しめ)新時代(しんじだい)地政学(ちせいがく)リスク

トランプ米大統領(べいだいとうりょう)がグリーンランドの領有(りょうゆう)主張(しゅちょう)し、デンマークなど欧州(おうしゅう)8か(こく)への関税措置(かんぜいそち)表明(ひょうめい)したが、NATO事務総長(じむそうちょう)との合意(ごうい)撤回(てっかい)された。ダボス会議(かいぎ)では軍事力行使(ぐんじりょくこうし)否定(ひてい)したものの、NATO貢献(こうけん)見返(みかえ)りとして領有権(りょうゆうけん)要求(ようきゅう)し、欧州首脳(おうしゅうしゅのう)から(つよ)批判(ひはん)()びた。

この騒動(そうどう)は、戦後(せんご)国際秩序(こくさいちつじょ)(おお)きく()らいでいることを象徴(しょうちょう)している。主権国家(しゅけんこっか)領土(りょうど)経済的圧力(けいざいてきあつりょく)獲得(かくとく)しようとする手法(しゅほう)は、19世紀的(せいきてき)帝国主義(ていこくしゅぎ)彷彿(ほうふつ)とさせる。同盟国(どうめいこく)であるはずのデンマークに(たい)してさえ、このような要求(ようきゅう)()きつける姿勢(しせい)は、NATO体制(たいせい)そのものの信頼性(しんらいせい)(そこ)なう。

グリーンランドが注目(ちゅうもく)される背景(はいけい)には、気候変動(きこうへんどう)による北極海航路(ほっきょくかいこうろ)開拓(かいたく)豊富(ほうふ)地下資源(ちかしげん)がある。中国(ちゅうごく)やロシアも北極圏(ほっきょくけん)への影響力拡大(えいきょうりょくかくだい)(はか)っており、地政学的重要性(ちせいがくてきじゅうようせい)年々(ねんねん)(たか)まっている。トランプ()要求(ようきゅう)粗野(そや)だが、この地域(ちいき)をめぐる大国間競争(たいこくかんきょうそう)という文脈(ぶんみゃく)では理解(りかい)できる側面(そくめん)もある。

NATO貢献(こうけん)を「取引材料(とりひきざいりょう)」として使(つか)発想(はっそう)は、集団安全保障(しゅうだんあんぜんほしょう)理念(りねん)根本(こんぽん)から(くつがえ)す。同盟(どうめい)とは共通(きょうつう)価値観(かちかん)相互防衛(そうごぼうえい)約束(やくそく)(もと)づくものであり、金銭(きんせん)領土(りょうど)交換(こうかん)する商品(しょうひん)ではない。この論理(ろんり)常態化(じょうたいか)すれば、小国(しょうこく)(つね)大国(たいこく)要求(ようきゅう)(おび)えることになり、国際秩序(こくさいちつじょ)弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)世界(せかい)逆戻(ぎゃくもど)りする。

欧州諸国(おうしゅうしょこく)反発(はんぱつ)当然(とうぜん)だが、同時(どうじ)にこの事態(じたい)欧州(おうしゅう)安全保障(あんぜんほしょう)における米国依存(べいこくいぞん)脆弱性(ぜいじゃくせい)露呈(ろてい)した。フランスのマクロン大統領(だいとうりょう)が「戦略的自律性(せんりゃくてきじりつせい)」を(うった)えてきた意味(いみ)が、(いま)ほど明確(めいかく)になったことはない。欧州(おうしゅう)独自(どくじ)防衛力強化(ぼうえいりょくきょうか)真剣(しんけん)検討(けんとう)せざるを()ない局面(きょくめん)()たされている。

日本(にっぽん)にとっても他人事(たにんごと)ではない。米国(べいこく)同盟国(どうめいこく)として安全保障(あんぜんほしょう)依存(いぞん)する構造(こうぞう)欧州(おうしゅう)類似(るいじ)しており、トランプ()の「取引的外交(とりひきてきがいこう)」は(ひがし)アジアでも展開(てんかい)される可能性(かのうせい)がある。尖閣諸島(せんかくしょとう)沖縄(おきなわ)基地問題(きちもんだい)交渉材料(こうしょうざいりょう)にされるリスクを、(わたし)たちは真剣(しんけん)(かんが)えるべきだ。

この事件(じけん)から(まな)ぶべきは、国際秩序(こくさいちつじょ)安定性(あんていせい)当然視(とうぜんし)してはならないということだ。ルールに(もと)づく秩序(ちつじょ)は、それを支持(しじ)する国々(くにぐに)不断(ふだん)努力(どりょく)によってのみ維持(いじ)される。同盟関係(どうめいかんけい)も、価値観(かちかん)共有(きょうゆう)相互尊重(そうごそんちょう)なくしては持続(じぞく)しない。(わたし)たち一人(ひとり)ひとりが、こうした国際情勢(こくさいじょうせい)変化(へんか)関心(かんしん)()ち、民主主義国家(みんしゅしゅぎこっか)としての責任(せきにん)自覚(じかく)することが(もと)められている。

📚 おすすめの本

書籍数: 2