第174回芥川龍之介賞 候補作紹介

第174回芥川龍之介賞の候補作が発表されました。選考会は2026年1月14日(水)に都内で開催される予定です。前回の第173回では芥川賞・直木賞ともに「該当作なし」という結果となり、1998年の第118回以来27年ぶりの異例の事態となりました。今回の選考会には例年以上の注目が集まっています。

【候補作品】

■久栖博季(くすひろき)「貝殻航路」(『文學界』2025年12月号)

久栖博季氏は38歳。今回が初の芥川賞候補入りとなります。「貝殻航路」は、光の消えた灯台、あの日帰ってこなかった父をめぐる物語。霧に滲む釧路の街を舞台に、主人公が痛みと空白の記憶を結んでいく作品です。喪失と記憶、家族の絆を繊細な筆致で描き出しています。

■坂崎かおる(さかさきかおる)「へび」(『文學界』2025年10月号)

坂崎かおる氏は1984年東京都生まれの41歳。第171回に続き2回目の候補入りです。2020年「リモート」でかぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞後、精力的に作品を発表。2024年「ベルを鳴らして」で日本推理作家協会賞短編部門受賞、2025年『箱庭クロニクル』で吉川英治文学新人賞を受賞するなど、近年最も注目される作家の一人です。独特の視点で日常を描き、含みを持たせた結末が特徴的な作風で知られています。

■坂本湾(さかもとわん)「BOXBOXBOXBOX」(『文藝』2025年冬季号)

坂本湾氏は1999年北海道生まれ、宮古島育ちの26歳。本作で第62回文藝賞を受賞しデビューしました。薄霧のたちこめる宅配所で、レーンに流れてくる無数の荷物を仕分ける安(あん)。一日中ほとんど誰とも口をきかず、箱の中身を妄想することで単調な労働をやり過ごすうちに、禁断の衝動が彼を蝕んでいく――。「ブルシットジョブ時代の〈ベルトコンベア・サスペンス〉」と評される、新時代の〈労働〉を暴く意欲作です。

■鳥山まこと(とりやままこと)「時の家」(『群像』2025年8月号)

鳥山まこと氏は1992年兵庫県宝塚市生まれの33歳。作家であり一級建築士でもあります。2023年「あるもの」で第29回三田文學新人賞を受賞しデビュー。「時の家」は第47回野間文芸新人賞を受賞した話題作で、自身も自宅を設計した建築士ならではの視点で、家と記憶の関係を描いた「建築文学」。ここで暮らしていた人々の存在の証を描きとめる、傑出した完成度の作品と評されています。

■畠山丑雄(はたけやまうしお)「叫び」(『新潮』2025年12月号)

畠山丑雄氏は1992年大阪府吹田市生まれの33歳。京都大学文学部在学中の2015年、「地の底の記憶」で第52回文藝賞を受賞しデビュー。2025年には『改元』で第38回三島由紀夫賞候補となっています。「叫び」は大阪の茨木、満州、そして2025年大阪万博を舞台に、銅鐸を作り、歴史を学び、恋をした男の物語。時代を横断するスケールの大きな作品です。

【選考委員】

小川洋子、奥泉光、川上弘美、川上未映子、島田雅彦、平野啓一郎、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一(敬称略)

今回は新人作家から経験豊富な作家まで、バラエティに富んだ顔ぶれとなりました。特に坂崎かおる氏は前回に続く候補入りで、受賞への期待が高まります。また、鳥山まこと氏は野間文芸新人賞との「ダブル受賞」なるか注目です。前回の「該当作なし」を受けて、今回はどのような結果となるのか、選考会の行方が注目されます。

📚 候補作品

書籍数: 5